2016.12.13 縁側に三毛猫
ある朝、私は病院に向かって歩いていた。
先日受けた検査の結果を聞きに行く為だ。

自転車を使おうかどうか迷ったが、
昨晩チラチラ舞った雪と、家の前のうっすら凍った道に、
3〜40分程の道を歩くことに決めたのだ。

大通りを曲がると、目的地が見えてきた。
駅前に続く開発地の一角に新しくできた広い通りだが、
住宅地の中で車も人もあまり通っていない。

今も、時折車が通り過ぎる他は、
私の前を行く老齢の女性がひとりきりだ。

ふと、女性が足を止め、一軒の家の垣根を覗き込んだ。
何か気になるのか。珍しい花でも見つけたか。

私が近付くとすぐさま女性はその場を離れ、
また元のように歩き出した。

何も無かったのかもしれない。

しかし、なんとなく気になった私は、
女性と同じように垣根の隙間から庭を覗いてみた。
すると、

「にゃ〜ん」

縁側に、三毛猫。

その家の飼い猫なのか?お行儀よく座っている。
つぶった目を細く開け私の方を見ると、
「にゃ〜ん。にゃ〜ん」
何度も繰り返し話しかけてくる。

「はい、おはよう」
猫が好きな私は、思わず言葉を返してしまった。
端から見たら変な人、怪しい人物かもしれない。
けれど、幸い、通りには誰もいない。

「どうしよう、どうしよう」
他人の家の前で私は何度も迷ったが、
「にゃ〜ん」
猫の後押しに、バッグから携帯を取り出すと、
カメラを立ち上げ大急ぎでズームアップした。

パシャリ。

背中から差す日で、携帯の画面は見えない。
猫はちゃんと写ったのだろうか。
心配ではあるが、自分の怪しさも自覚しているので、
私は画面を保存するとすぐに携帯を閉じた。

「ありがとうね」
「にゃ〜ん」

猫は、近付いてくるでも無く、逃げるでも無く、
ただそこで日を浴びているだけ。
私は、閉じた携帯を開け、撮ったばかりの写真を確認した。

撮れてはいる。
が、やはり光の加減で良くは見えない。

「にゃ〜ん」
どうだった?と聞くように鳴いた猫に、
「綺麗に撮れたよ。ありがとうね」
「にゃ〜ん」

おしゃべりな猫である。
もう少し会話を楽しみたいが、
あまり長く他所の家を覗いているのはまずいだろう。

そろそろ行った方が良いと判断した私は、
再び携帯を閉じるとそれをカバンにしまった。
「じゃあね、ありがとう」
「にゃ〜ん」

私は歩き出し、猫は目を閉じる。
辺りには誰もいない。車も人も通らない。
先の女性も、とうにどこかへ行ってしまった。

知っているのは、三毛猫だけ。

これは、私と猫だけの秘密なのである。

三毛猫

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