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冬コミまであと1週間ちょいなので、
そちらと呪術廻戦の宣伝を兼ねてウチの小説最新作を。
昨日upしたpixivからの再録です。
原作漫画主人公の師となる五条先生とその“唯一の親友”の学生時代、
夏油傑のいない高専で四年生になった五条悟の話。
(2019年12月時点でコミックス未収録ネタバレ有り)


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 二〇〇八年四月、「僕」は高専四年になった。



 現時点で国内唯一の特級呪術師として、僕は忙しい毎日を過ごしていた。連日の任務、束の間の休憩、また任務。反転術式による治療が重宝するとされ、硝子はほとんど外の任務に出ない。卒業後は本格的に医療の道を目指す予定で受験勉強にも励んでいるようで、同じ校内にいても顔を合わせる機会がめっきり減った。
 一学年下の七海は、昨年級友を亡くしてからすっかり覇気が無くなった。元々口数がそう多くは無い方だったのに、最近は僕が話しかけても反応が鈍く、青白い顔で最低限の任務をギリギリこなしているのが丸わかりだった。
(あぁ、こいつも駄目だな)
そう感じたのは、今年に入って何度目か。呪術師は時に命懸けの危険な仕事だ。やる気が無いなら辞めたほうがいい。命を、精神を削ってまで、他人の為に呪霊を祓ってやる必要など本当は無いのだ。僕らにだって生きる権利はある。いや、御三家の家系に生まれた時点で僕には最初から無かったのかもしれないが。

 僕らの学年が豊作と呼ばれた陰で、時に不作と呼ばれる年もある。二年下の伊地知達がそれだ。特に目立つ者も秀でる者も無く、一般人に毛が生えた程度の呪力でこの世界の仕組みを学んでいく。任務につくほどの実力は無い彼らだが、やがて補助監督や爺さんらお偉方の付き人として呪術界を下から支えていくのだろう。正に縁の下の力持ちというやつだ。入学当初は僕のからかいに戸惑ってビクついていた伊地知だけど、去年の秋から急に大人しくなった僕を前に、今は何か言いたげな弱々しい表情を浮かべるだけだった。

 そして・・・

 春が来て、呪術高専はまた新たな生徒を迎えた。
 彼らは「夏油傑」を知らない。



「五条先輩、組手お願いします!」
「あ、俺も!」
「いいよ。でも、僕最強だから。怪我しないでよ」
 一年生達の申し出に、快く了承を告げる。笑顔を向けると、彼らは張り切って準備運動を始めた。余程の事がない限り組手でも術の稽古でも付き合っているので、彼らの中では僕は面倒見の良い先輩となっているようだった。昨年までは面倒臭そうな顔をしていても意外と付き合いの良かった七海が今は全く後輩の相手をしないので、新入生の間では僕が一番頼れる先輩となりつつあるのだろう。

 全く・・・柄でも無い。

 久し振りに任務が無く、半日たっぷり後輩達の相手をした夕方。僕は彼らと別れ、ひとり寮に向かっていた。夕日が差し込む廊下、がらんとした隣の部屋。合鍵はまだ僕の手元にある。時々こうして訪れると、布団も何も無く剥き出しになったベッドにゆっくりと横たわる。僕と傑のふたりだけが使っていたこの階にやってくる人はほとんど無く、ドアはいつも開け放したまま。サングラスは入り口にぽつんと落ちている。
 外から先程の後輩達の笑い声が聞こえてきた。明るく屈託の無い声。自分が最後にあんな風に笑ったのはいつだっただろう?今の僕に彼らは眩し過ぎた。彼らの前でサングラスは外せない。彼らに釣られるように僕も少しずつ笑みを取り戻してはいるものの、ひとりになると思い出すのはアイツのことばかりだ。

 
 アイツが事件を起こすまで全然気が付かなかった。たぶん予兆は色々あったのだ。痩せたように見えたのも、今思えばそうだったんだろう。アイツは夏バテだと誤魔化したが。時々暗い顔をしていることもあったけれど、それは単に任務続きで疲れているからだろうと深く考えもせず、共に過ごす中で笑ったり騒いだり馬鹿をやったり、ずっとそんな日々が続くと思っていたんだ。

 僕は・・・俺は。
 ふたりなら最強だと思っていたのに。

 後輩達の声が聞こえなくなり、廊下が黒に飲み込まれた。夜が開きっ放しのドアから少しずつ室内に忍び込んでくる。
「真っ暗じゃないか」
 そんなアイツの呆れ声が聞こえることも、もう無い。




 傑・・・

 すぐる。

 どうして僕を置いていったの。

 傑・・・



 もう一度 ココで アイタイ。



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タイトルはBUCK TICKの曲「さくら」から。

2019年冬コミ参戦!!

コミックマーケット97
参加日:12月28日土曜日
場所:東京ビッグサイト
配置場所:西ホールう-06a
サークル名Shambara(しゃんばら)

呪術廻戦スペースにてお待ちしております。

C97冬コミサークルカット
(クリックで拡大)

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